読んで字のごとく、必要以上に汗をかいてしまうのが多汗症です。顔や手の平、足、わきといった部分に多く見られるものの、そこだけに限定されているわけではありません。
暑さの調節に必要な量の発汗ではなく、大量の汗をかいてしまうのは精神的な要因が原因とかつては考えられていました。プレッシャーのかかる場面で緊張してしまうのが多汗症の原因とされていたのです。
しかし、現在では交感神経の働きが原因として関連していることが分かってきています。詳細は後述しますが、単純に気持ちをリラックスさせれば改善されるとも言い切れない部分があるのです。
多汗症の症状がひどいと、紙に文字を書こうとしても紙が破れてしまったり、文字がにじんでしまう原因になります。手を握られるのが恥ずかしくなるため、恋人と手をつなぐのも躊躇してしまいます。こうして、日常に暗い影を落とす結果にもなってしまうのです。
ただし、多汗症の治療には色々な方法があるため、それらによって改善させることは望めるので、絶望する必要はありません。手術には抵抗があるのなら、他の方法によって克服を目指してみてはいかがでしょうか。
病院で行う本格的な多汗症の治療から、自分で行える手軽な対策まであるので、困っている度合いによっても上手に使い分けるとよいでしょう。
多汗症の原因
先ほども少しだけ触れたように、多汗症の原因としてはストレスや緊張が関係しているだけではなく、交感神経が過敏になってしまっている場合があります。簡単に言うと、交感神経は体が活動する時に活発になり、リラックスしている時に働く副交感神経と相互にバランスを取っています。
交感神経が働きすぎるために起きる現象の一つが必要以上の発汗でありこの場合には緊張していなくても汗が出ます。そのため、必ずしも精神的な原因によって引き起こされているとは限りません。
生活習慣の乱れや過度のダイエット、ためこまれたストレスによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、こうした現象が起きることがあるので、基本的な健康習慣が重要になります。
もちろん、ストレスや緊張が原因で多汗症になる場合もあるため、たとえば対人恐怖症であったり、そこまではいかなくても人見知りや人付き合いが苦手な方にとって、他人と話す時に手の平や顔に汗をかいてしまうことは少なくないでしょう。
さらに、他の病気が原因で多汗症になっている場合もあり、たとえば、更年期障害によってエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの減少や甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫といった疾患が裏に潜んでいるケースが存在します。
薬を服用している時には、その副作用が原因の場合もありますので、処方の際に渡された注意書きを読み返してみたり、医師の注意を思い出してみるとよいでしょう。必要なら質問しておくと、多汗症が薬によって引き起こされている事実に行き当たる可能性があります。
精神性多汗症とは
原因のところでも触れたように、ストレスは多汗症を引き起こす要因の一つです。気持ちの面で問題が積み重なって主な原因になってしまうのが精神性多汗症です。
たとえば、常時仕事のプレッシャーにさらされていて息が抜けなくなっていたり、対人恐怖症で人と会うのが怖いといった日常的なストレスが溜まっていくと、精神性多汗症になってしまうことがあります。
自分の汗の量が気になり、それがストレスになってさらに精神性多汗症の症状を悪化させる悪循環に追い込まれる場合もあります。そのため、気分転換を図っていつまでも思い悩まないようにするのも有効な対策です。
現在の問題だけが原因になるわけではなく、精神性多汗症は幼少期までさかのぼって両親との関係や成育環境、トラウマといった問題が関わっているケースもあるため、すぐに解決できるとは限りません。こだわりすぎず、焦らないようにするのも大切です。すぐに治療して治したいと意気込みすぎると、それが新たな気苦労を呼び込みかねません。
手の平と足の掌蹠多汗症
全身に汗をかくだけではなく、手足だけに多い人もいます。これは掌蹠多汗症(しょうせきたかんしょう)と呼ばれる症状で、神経を消耗するような作業に従事する人や、手先の細かい仕事をする人、緊張しやすい人、真面目な性格の人に高頻度に見られます。
掌蹠多汗症は手足が対象でしたが、手の平ばかりの場合には手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)、足が中心なら足蹠多汗症(そくせきたかんしょう)と表現されることもあります。
手掌多汗症の場合には手の平がぬれてしまっている場合で、楽器を弾けなくなったり、パソコンのキーボードが壊れてしまう例すらあります。人間は生活の中で手を使う場面が多いため、程度がひどいと大きな支障になってしまうのです。
足蹠多汗症では雨の日に外出した時のように靴下が湿ってしまったり、裸足で歩くと床に足跡が残る例もあります。また、靴の中が常時蒸れるため、どうしても臭いがきつくなりやすくなるのです。手に比べると見た目には目立たないものの、臭いまで含めると決して小さな悩みではありません。
多汗症の治療
病院に行って治療を受ける場合には、皮膚科や精神科、心療内科が主に担当となっています。まずは皮膚科を受診しておくのが無難でしょう。ここでメンタルな要因が強く作用していると考えられるなら精神化や心療内科の力も借り、このほかにも、神経内科や美容外科が関わってくるケースもあります。
薬で治療する場合、市販の制汗剤のような手軽に使われるものから、病院で処方されるものまであります。一時的に発汗を押さえるなら塩化アルミニウムが有効であるほかに、ボツリヌス菌の力を利用するボトックス注入では交感神経をブロックします。特に精神性多汗症に有効とされています。気持ちを落ち着けるために抗不安薬を服用する場合もあります。
わきの下の治療として、超音波治療を行い、汗腺の機能を取り除く方法もあるものの、導入している病院が限定される点や、顔や手の平、足など、わきの下以外の場所には使えないというデメリットがあります。
交感神経を切除する手術を行って多汗症の治療を行う場合もあります。特に手の平や足の汗に対して効果のある手法で、入院を伴わないのが主流となっています。効果は高いものの、副作用として他の部分に汗をかく代償性発汗が存在します。手術を受ける場合には、安心して任せられる専門医がいる病院で十分に相談してから同意しましょう。
このほかに、精神科や心療内科の医師のカウンセリングを受けて気持ちを落ち着かせる場合もあります。
病院に行くべきか
放置しても命に関わる病気ではないため、多汗症を理由に病院に行くべきかどうか迷っている方も少なくないのではないでしょうか。絶対的な基準があるわけではないものの、困っているのなら一度受診してみてはいかがでしょう。
程度によっては日常生活に支障をきたしたり、将来に不安を覚える羽目になるので、長く続くのであれば放っておいて気がかりな状態が継続するよりは、早めに病院で医師の診断を受け、必要な対策を講じたほうが気持ちも楽になります。
もちろん、病院に行く前に多汗症を克服するため、自分で行える気持ちのコントロールなどの対処法を実践するのもよいでしょう。精神的な原因の場合には、ある時期を境に劇的に回復する可能性もあるため、あまり悲観的にならないでください。
多汗症は直接的に体に危険が及ぶわけではなくても、大きな悩みになるのは珍しくありません。もし苦しい思いをしているのなら、自分だけで悩むよりも、病院で医師に相談して対応してみてはいかがでしょうか。手術のように大掛かりな方法のほかに、薬による治療もあるので、納得する方法を選べます。